「アート思考」とは・・・?
著者曰く、「自分なりの答えを作り出すための作法」のことを「アート思考」というらしい。*1
美術という科目の本来の役割はそうした力を身に付けることであり、一つの正解を見つけ出す力を養う数学とは対極にあるもの・・・。
実際の生活の中で「一つの正解」を求められる場面はたくさんあるし、私もついつい正解を追い求めたくなってしまうことが多いです。
もちろん正解を追い求めることも必要なんだけど、その「正解」って人の価値観によっても違うし必ず正解が存在するとも限らない…。
音楽の世界に生きているとそのことを痛いほどに感じます。
この著書の中では、「アート」というものを植物に例えて、「表現の花」「興味のタネ」「探究の根」の3つの部分からなっている、と表現していました。
「表現の花」とは作品のこと、「興味のタネ」とはアート活動の源になる興味や好奇心、疑問など、そしてそのタネから伸びている「探究の根」はアート作品が生み出されるまでの長い過程を示しており、この根の部分こそがアートの本質である、と・・・。*2
著者曰く、そんな探究の根を伸ばし植物を育てることに一生をかける人こそが「真のアーティスト」だそうな。*3
私もそんな「真のアーティスト」になりたいものです・・・。
という私のことは一旦隅に置いておいて(笑)
この著書の題材は美術作品ですが、最後まで読み進めればさまざまな「アート作品の見方」というものを体験できます。
「この作品はこういう背景で描かれて、こういうものが表現されている」
・・・なんてそんなことではなくて、「アートってどんな風に見ればいいんだろう?」「そもそもアートってなんだろう?」そんな本質的なことに踏み込みます。
著者も何度も本の中で言っていますが、「アートに詳しくなるため」ではなく、日ごろ考えもしないことに思いを巡らせることで「自分なりの答え」を見つける力を養うために・・・。*4
「アートの見方」、ひいてはこれからの多様性を求められる時代に不可欠であろう「自分で新しい答えを創造する力」というものを考えさせられる著書だと感じました。
音楽だとどうだろう・・・?
先程も言いましたが、この著書の題材にしているものは美術作品、とりわけ20世紀以降のアート作品です。
でもここでふと疑問に思ったのです。
「音楽だとどうだろう・・・?」
音楽も美術も同じく「アート」であることは間違いありません。
ルネサンス期の美術が王侯貴族や教会などから注文されて作っていたように、バッハやハイドンなどの時代の音楽も貴族や富裕層から注文されて作曲されていて、作者が作りたいものを自由に作るようになったのは後の時代のこと。そこも一緒です。
著者はアート作品の見方は2つあると言っていました。*5
一つは「背景とのやりとり」
作者の考えや人生、時代背景など、作品を成り立たせている様々な要素から作品について考えること。
もう一つは「作品とのやりとり」
アーティストがどんなことを考えて作品を作ったかはまったく考慮せず、鑑賞者が作品を見て自由に思いを巡らせることです。
その2種類の見方については著書の中で実際に体験してほしいのですが…
著者はこんなことも言っていました。
音楽を聴くとき、私たちは「作者はなにを表現したかったのだろう?」「ここはどうするのが『正しい』のだろう?」「作者の意図がわからないからこの曲は理解できない・・・・・」などと考えてばかりはいません。ただ純粋にその作品だけに向き合っている瞬間があるはずです。
このように、音楽の鑑賞においては、多くの人がごく自然に「作品とのやりとり」をしているのです。
*6
確かに、失恋ソングを聴いたら自分の体験に重ね合わせて涙し、故郷を歌った歌を聴いたら自分の故郷に思いをはせる…。
そこにその曲の作者が体験した実際の出来事や意図についてはまったく関係がありません。
でも、『音楽の鑑賞においては自然に「作品とのやりとり」をしている』・・・
本当にそうでしょうか?
歌詞のある、内容が明確な音楽はともかくとして、クラシックになった途端に「背景とのやりとり」ばかりになっていませんか?
「クラシックって難しそうだしよくわからない・・・」なんて、「作品とのやりとり」ができているならそんな言葉は出てこないはずです。
どうしてそう思うのか・・・?それは簡単です。
かつての私が実際にそうだったからです。
音楽における「作品とのやりとり」
かつての私も「クラシックなんてよくわからない」と思っていました。
尊敬できる先生との出会いとかいろいろあって現在はピアノを仕事にまでするようになったのですが・・・
まあ詳しい話はこっちのページを見てもらうとして。
ともかくそんな私が「クラシックって楽しい!」と思うようになったきっかけは、まさにこの著書で言う「作品とのやりとり」の楽しさを知ったからだと思っています。
クラシックって一つ一つの要素が密接に絡まりあい、本当に深く考え込まれて作られているんです。
それをまるでパズルのように見つけ出す楽しみを知ってしまったことがクラシックにどっぷりはまってしまった理由ではないかと思います。
楽譜を眺めていたら、「あ!このメロディってこれを発展させてるんだ!」とか「ここの部分とそっちの部分を掛け合わせてるのね。」とか・・・
ベートーヴェンの有名な「運命」なんて、ジャジャジャジャーン♪のフレーズだけで一体どこまで行っちゃうんだ・・・とか。
とはいえ、それだけですべて説明ができるわけではないし、向き合い方に正解はきっとないわけで、他の人はまた違う見方をするんだろうと思います。
結局のところ、
「音楽における『アート思考』ってなんだろう?」
「私が日ごろ取り組んでいる以外の『作品とのやりとり』の方法にはどんなものがあるのだろうか?」
そんなところがこの著書を読み終えて疑問として残りました。
このブログを読んでくださった皆さんはどう思うでしょうか?
読んだらぜひご意見を聞かせてほしいです。

- 作者:末永 幸歩
- 発売日: 2020/02/20
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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